ECプラットフォームのリプレイスで失敗しないために|移行先の選び方と進め方を開発会社が解説
ECプラットフォームのリプレイスを検討しはじめる理由は、たいてい似ています。やりたい施策が今の仕組みでは実現できない。改修を頼むたびに見積もりが高い。ライセンス費が固定でかかり続ける。
ただ、リプレイスは「乗り換えれば解決する」ものではありません。移行そのものが大きなプロジェクトで、進め方を誤ると、費用をかけた末に以前より使いにくくなることもあります。
この記事では、ECサイトのリプレイスを請け負っている立場から、移行先をどう選び、どう進めるかを整理します。
まず「何を解決したいのか」を1つに絞る
リプレイスが失敗する原因の多くは、目的が曖昧なまま進むことです。「古いから」「使いにくいから」では判断基準になりません。
次のどれが主目的かを決めてください。
- コスト構造を変えたい(固定費を下げる、改修費を抑える)
- できることを増やしたい(独自機能、基幹連携、新しい販売形態)
- 運用を楽にしたい(現場の手作業を減らす)
- 改修のスピードを上げたい(施策を試せるようにする)
これが決まると、移行先の評価軸も自動的に決まります。逆に決まらないまま比較を始めると、機能表を眺めるだけで判断がつかなくなります。
ecbeing からのリプレイスが検討される背景
ecbeing のような国産のパッケージは、安定性と実績があり、大規模なECを支える基盤として広く使われています。一方で、リプレイスの相談が出てくるのは次のような場面です。
| きっかけ | 実際に起きていること |
|---|---|
| 改修のたびに費用がかかる | やりたい施策の数だけ見積もりが必要で、試行錯誤しづらい |
| 固定費が事業規模と合わない | 売上の増減にかかわらず一定のコストがかかり続ける |
| 要件が製品の設計思想に合わない | 独自の販売形態や業務フローを表現しきれない |
| 連携したいシステムが増えた | 基幹・在庫・会計との接続が想定より難しい |
ここで重要なのは、製品の優劣ではなく相性の問題だという点です。標準的なEC運用なら安定したパッケージのほうが総合的に有利な場面もあります。
移行先の選択肢と、選び分けの基準
移行先は大きく3つです。
| ECパッケージ(EC-CUBE等) | SaaS・カート | フルスクラッチ | |
|---|---|---|---|
| 自由度 | ソースコードを改修できる | 提供機能の範囲内 | 制限なし |
| 初期費用 | 中程度 | 低い | 高い |
| ランニング | 保守費用 | 月額(売上連動もあり) | 保守費用 |
| 基幹連携 | 作り込める | 制約が多い | 要件どおり |
| 向くケース | 独自要件はあるが一から作るほどではない | 標準的なEC運用 | ECが事業の中核・特殊な販売形態 |
EC-CUBE が選ばれやすいのは、オープンソースでソースコードレベルの改修ができるためです。製品の枠内でカスタマイズするのではなく、必要なら中身を変えられます。ライセンス費用の構造も、パッケージ製品とは異なります。
ただし自由に改修できるということは、改修した分だけ保守の責任が自社側に来るということでもあります。ここを理解せずに移行すると、「安くなるはずが保守で相殺された」という結果になります。
フルスクラッチとの比較についてはECサイトのフルスクラッチとは?で、費用の目安を含めて整理しています。
移行の進め方(5つの工程)
① 現状の棚卸しをする
今のECで実際に使われている機能を洗い出します。ここで必ず出てくるのが「作ったが使われていない機能」です。これを移行対象から外すだけで、工数と費用が変わります。
運用担当者へのヒアリングが要ります。管理画面の機能一覧を見るだけでは、実態は分かりません。
② データ移行の計画を先に立てる
移行で最もトラブルが起きるのがここです。商品、会員、注文履歴、ポイント、クーポン。それぞれ移行するかどうか、どの形式で持つかを決めます。
- 会員のパスワードは移行できないことが多い(再設定の案内が必要)
- 注文履歴をどこまで遡って移すか
- ポイントや会員ランクの計算ロジックが変わらないか
移行後に「以前のデータが見られない」となると、現場の信頼を失います。移行しないと決めたデータは、参照用に別途保管するといった判断も必要です。
③ URLとリダイレクトを設計する
見落とされやすく、影響が大きい工程です。URL構造が変わるなら、旧URLから新URLへの301リダイレクトを必ず設定します。
これを怠ると、検索経由の流入が一気に落ちます。商品ページ、カテゴリページ、記事ページのすべてについて対応表を作ってから移行してください。
④ テスト期間を確保する
注文から出荷、返品、キャンセルまで、実際の業務フローを通したテストが必要です。画面が表示されるかではなく、業務が回るかを見ます。
決済まわりは特に慎重に。テスト環境で問題がなくても、本番の決済代行会社との接続で挙動が変わることがあります。
⑤ 段階的に切り替え、戻せるようにしておく
一度に全部を切り替えるのはリスクが高い進め方です。可能なら段階的に公開し、問題が起きたときに元に戻す手順を用意しておきます。
切り戻しの手順がないまま本番を迎えると、想定外が起きたときに現場が止まります。
移行でよく起きる失敗と、その原因
| 失敗 | 原因 |
|---|---|
| データが欠けた・壊れた | 移行計画を後回しにした。テストデータで確認しなかった |
| 検索流入が落ちた | リダイレクト設計を忘れた、または漏れがあった |
| 想定外の追加費用が出た | 使われていない機能まで移行対象に入れた。要件の詰めが浅かった |
| 現場が使ってくれない | 運用担当者を巻き込まずに要件を決めた |
| 結局コストが下がらなかった | 改修の自由度と保守負担がセットであることを見込んでいなかった |
最後の2つは、技術ではなく進め方の問題です。要件定義の段階で運用担当者が入っているかが、移行後の定着を左右します。
費用と期間の目安
リプレイスの費用は、移行するデータ量と作り込む機能の範囲で変わります。参考として、当社の費用レンジを公開します。
| 規模 | 費用の目安 | 期間 | 想定するケース |
|---|---|---|---|
| 中規模 | 500〜1,500万円 | 3〜6ヶ月 | 既存ECの移行、標準的な機能+一部カスタマイズ |
| 大規模 | 1,500〜5,000万円以上 | 6ヶ月〜1年以上 | 基幹システム連携、複数ブランド統合、大規模EC |
データ移行の工数は、移行元の状態によって大きく変わります。データの持ち方が整理されていない場合、その調査から必要になります。見積もりを比較するときは、データ移行がどこまで含まれているかを必ず確認してください。
移行先を任せる会社の選び方
リプレイスは開発だけで終わりません。移行後の運用まで見据えて選ぶ必要があります。
- 移行元の製品を解析できるか(仕様書がない前提で進められるか)
- データ移行の経験があるか(机上の計画ではなく実績で判断する)
- 複数の選択肢を提示できるか(自社が売りたい製品しか勧めない会社は要注意)
- 移行後の保守を同じチームが担当するか
3つめが特に重要です。EC-CUBEしか扱えない会社はEC-CUBEを、SaaSを売る会社はSaaSを勧めます。複数の方式を手がけている会社なら、要件に合わないときに「それは向きません」と言えます。
選び方の詳細はシステム開発会社の選び方で、相見積もりの取り方まで整理しています。
当社のECリプレイス支援について
C-limberは2013年の設立から13年目、累計1,000件以上のプロジェクトに携わってきました。ECについては、EC-CUBEのカスタマイズ、フルスクラッチ開発、そして自社でECパッケージを開発・運営という3つの立場すべてを経験しています。
実績の一例として、業務用家具メーカーの株式会社アダル様(売上88億円・業界2位)のオンラインショップを構築・継続改修し、EC売上が2年で約10倍、成約率は18%から45%になりました。移行して終わりではなく、その後の改善まで伴走した結果です。
また、レンタル・サブスク特化のECパッケージ「EC Rent」を自社で開発・運営し、関西電力様への導入実績があります。仕様書のない既存システムの解析や、オンプレミスから AWS への移行にも対応しています。
まとめ
ECプラットフォームのリプレイスは、「何を解決したいのか」を1つに絞るところから始まります。それが決まれば、移行先の評価軸も、優先すべき機能も見えてきます。
進め方では、現状の棚卸し・データ移行計画・リダイレクト設計の3つを先に固めてください。ここを後回しにすると、費用と検索流入の両方を失います。
そして、改修の自由度と保守負担はセットです。「乗り換えれば安くなる」とは限らないことを前提に、保守を含めた数年分で比較してください。
現状の把握だけのご相談でも構いません。既存システムの解析から着手できます。概算見積もりは無料ですので、Webシステム開発のページとあわせて、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。