受託開発とは?委託・請負との違いから費用相場・依頼の流れまで発注側の視点で解説
システム開発の外注先を探していると、「受託開発」「委託」「請負」「準委任」といった言葉が次々に出てきます。どれも似ているのに、契約書では明確に区別される。ここが曖昧なまま話が進むと、納品物の範囲や責任の所在で後から揉めることになります。
この記事では、受託開発の意味を整理したうえで、発注する側が実務で判断に迷いやすい「自社開発やSESとの違い」「費用の目安」「依頼の流れ」までをまとめます。エンジニアの転職向けではなく、これからシステム開発を依頼する立場の方に向けた内容です。
受託開発とは、外部の開発会社にシステム構築を任せること
受託開発とは、企業が必要とするシステムを開発会社が引き受け、要望に沿って構築することを指します。自社にエンジニアがいない場合や、社内のリソースだけでは対応しきれない場合に選ばれる方法です。
ポイントは、「受託」は特定の契約類型を指す法律用語ではないという点です。業務を引き受ける側から見た言い方にすぎません。実際に結ぶ契約は、後述する請負契約か準委任契約のどちらかになります。ここを混同したまま話を進めると、「完成物を納品してもらえると思っていた」といった認識のずれが生まれます。
受託・委託・請負・準委任の関係を整理する
4つの言葉は、そもそも指しているレイヤーが違います。
- 受託:業務を引き受ける側から見た言い方
- 委託:業務を依頼する側から見た言い方。受託の対義語
- 請負・準委任:実際に結ぶ契約の種類
つまり「受託」と「委託」は同じ関係を反対側から呼んでいるだけで、契約の中身までは決まりません。「Webシステム開発の委託先を探している」という使い方が自然なのは、発注側の立場から述べているからです。
契約の中身を決めるのが、請負か準委任かという区別になります。
請負契約と準委任契約は「何にお金を払うか」が違う
ここが発注前にもっとも押さえるべきところです。両者は報酬の対象がまったく異なります。
| 観点 | 請負契約 | 準委任契約 |
|---|---|---|
| 報酬の対象 | 仕事の完成(成果物の納品) | 業務の遂行(稼働) |
| 完成の義務 | あり | なし |
| 負う責任 | 契約不適合責任 | 善管注意義務 |
| 向いているケース | 要件が確定している/ゴールが明確 | 要件が変動する/中長期で継続的に開発する |
請負契約では、決めた成果物を完成させて初めて報酬が発生します。一方の準委任契約は、一定期間エンジニアが稼働することに対して支払う形です。要件が固まりきっていない新規事業や、リリース後も継続的に機能追加していくプロダクトでは、準委任のほうが実態に合うことが多くあります。
なお、以前は請負における責任を「瑕疵担保責任」と呼んでいましたが、2020年4月1日施行の改正民法により「契約不適合責任」に改められています。契約書や提案書に古い用語が残っている場合は、内容が最新の法令を踏まえているか確認しておくと安心です。契約不適合責任では、成果物が契約内容に適合しないとき、発注者は修補などの追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除を求めうるとされています。
クライマーでは、要件が確定している案件向けの請負開発と、要件変動や中長期の継続開発に向いたラボ型開発の両方に対応しています。どちらが適しているかは、要件の固まり具合と開発期間から判断するのが現実的です。
自社開発・SESとの違い
受託開発と並べて語られやすいのが、自社開発とSESです。発注側から見ると、それぞれ関わり方が変わります。
自社開発は、自社のエンジニアが自社のプロダクトをつくることを指します。社内に開発チームを抱える必要があるため、採用と育成のコストが継続的に発生します。そのぶん仕様変更の意思決定は速くなります。
SESは、エンジニアの労働力を提供する契約形態です。多くの場合、エンジニアは発注企業側で作業し、指揮命令や進捗管理は発注企業が担います。つまりマネジメントの負荷が発注側に残るのが受託開発との大きな違いです。社内にプロジェクトを管理できる人がいない場合、SESを選ぶと運用が回らなくなることがあります。
受託開発では、設計から実装、テストまでを開発会社側のチームが担当します。技術的な判断を任せられる一方、要件の伝え方が曖昧だと期待とずれた成果物が上がってくるため、最初のヒアリングの質が結果を大きく左右します。
発注側から見た受託開発のメリットと注意点
メリットは、採用せずに開発力を確保できることに尽きます。エンジニアの採用は簡単ではなく、採用できても育成に時間がかかります。受託開発なら、必要な期間だけ必要な体制を用意できます。技術選定から相談できる点も、社内に技術がわかる人がいない企業には大きい要素です。
一方で注意点もあります。ひとつは、開発会社側にノウハウが蓄積されることです。もうひとつは、依頼先によっては下請け構造によって中間マージンが乗るケースがあることです。見積もりを比較する際は、実際に手を動かすのがどの会社なのかを確認しておくと判断を誤りません。
また、開発が終わった後の保守を誰が担当するのかも、着手前に決めておくべきポイントです。開発チームがそのまま運用・保守まで担当するのか、別部門に引き継がれるのかで、改修時のスピードが変わります。
受託開発の費用はどのくらいかかるのか
費用はシステムの規模と技術要件で大きく変わります。参考として、クライマーで実際にご提示している費用レンジを挙げます。
| 規模 | 費用の目安 | 期間 | 想定するシステム |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 200〜500万円 | 1〜3ヶ月 | 管理画面、予約システム、LP+フォーム |
| 中規模 | 500〜1,500万円 | 3〜6ヶ月 | 業務システム、ECサイト、マッチングサイト |
| 大規模 | 1,500〜5,000万円以上 | 6ヶ月〜1年以上 | 基幹連携、複数システム統合、大規模EC |
| ラボ型 | 60〜120万円/人・月 | 継続 | アジャイル開発、長期運用、リソース補完 |
金額の幅が広いのは、同じ「予約システム」でも、既存の基幹システムと連携するかどうかで工数が数倍変わるためです。そのため要件が固まる前の段階で正確な金額を出すことはできません。逆に言えば、ヒアリングもせずに即答される見積もりは、根拠が薄い可能性があります。
支払いは、規模にもよりますが分割払いが一般的です。着手時に手付金、中間金、納品後に最終金という形が多く、まとまった金額を一度に用意する必要はありません。
依頼から納品までの流れ
実際の進み方は会社によって異なりますが、クライマーでは次の5段階で進めています。
- ヒアリング:PMと技術者が同席し、課題を整理します
- 設計・技術選定:選定の根拠を明文化し、概算見積もりを出します
- 開発・レビュー:週次で進捗を共有しながら進めます
- テスト・納品:社内QAののち、受入テストを実施します
- 運用・保守:開発したチームがそのまま担当します
この流れで意識しているのは、全フェーズで技術がわかるメンバーが窓口を離れないことです。営業担当が受けて技術者に伝言する形だと、要件のニュアンスが落ちます。初回の相談から運用後の改修まで担当が変わらなければ、その取りこぼしが起きません。
なお、他社が構築したシステムの改修や保守の引き継ぎにも対応できます。その場合はシステムの解析が必要になるため、仕様書またはサーバーのログイン情報をご提供いただいています。仕様書が残っていないケースも珍しくありませんが、その場合は解析に時間をいただく形で対応しています。
依頼先を選ぶときに見るべきところ
受託開発会社は数多くあり、価格だけで比べると判断を誤ります。最低限、次の点は確認しておくとよいでしょう。
ひとつめは対応範囲です。アプリケーションだけ作れる会社と、インフラの設計・構築・運用まで一貫して見られる会社では、トラブル時の動きが変わります。サーバーは別会社という体制だと、障害の切り分けで時間を取られます。
ふたつめはセキュリティ体制です。実際に運用するシステムには顧客情報が入ります。ISMS(ISO/IEC 27001)のような第三者認証を取得しているかは、判断材料のひとつになります。
みっつめは運営側の視点を持っているかです。クライマーはレンタルEC向けパッケージ「EC Rent」を自社で開発・運営しています。自分たちで運営してみると、リリース後に本当に必要な機能と、あっても使われない機能がはっきり分かれることが見えてきます。この経験があると、開発前の段階で優先順位を絞り込めます。
選び方をもう少し具体的に知りたい方は、システム開発会社の選び方と比較のポイントで、相見積もりの取り方や見積書の読み方まで整理しています。
まとめ
受託開発は「業務を引き受ける側から見た言い方」であり、実際の契約は請負か準委任のどちらかです。成果物に対して支払うのか、稼働に対して支払うのか。この違いを最初に押さえておけば、納品範囲や責任の所在で後から揉めることは避けられます。
費用は規模によって200万円台から数千万円規模まで開きがあり、要件が固まる前に正確な金額は出せません。だからこそ、ヒアリングにどれだけ時間をかけてくれるかが、その会社の姿勢を測る材料になります。
クライマーは2013年の設立から13年目を迎え、累計1,000件以上のプロジェクトに携わってきました。ISMS認証とAWSセレクトティアサービスパートナーの認定を取得し、設計からAWSの運用保守まで一貫して対応しています。Webシステム開発のサービス詳細では、対応領域や進め方をより詳しくご紹介しています。
要件が固まっていない段階でも構いません。技術選定や概算見積もりのご相談は無料で承っていますので、お問い合わせからお気軽にご連絡ください。